肥前陶器のはじまりを歩く
唐津市街地の静かな住宅地。白壁の長い塀に包まれた 中里太郎右衛門陶房の前に車を停め、そのすぐ脇の小道へと足を向けます。

目指すのは、この陶房の裏手にひっそりと残る 肥前陶器窯跡。400年以上前、唐津焼が誕生した頃の記憶が眠る場所です。

陶房のとなりにある 御茶盌窯記念館。藩窯として茶盌を焼いた窯の歴史を伝える小さな資料館で、ここをかすめるようにして窯跡へ進みます(館内は撮影禁止)。

建物の裏手へ回ると、緑が濃くなり、次第に“陶工たちが使っていた斜面”の気配が近づいてきます。

案内板には、唐津焼の初期を支えた窯の概要が記されています。

記念館の横を抜けると、小高い草の盛り上がりが続く斜面に出ます。
一見するとただの丘のようですが、この“ふくらみ”全体が 肥前陶器窯跡です。
窯体は土に埋もれ、草に覆われていますが、よく目を凝らすと石積みや段差が残り、「ここに火床があったのかな」「ここが焚き口への通路だったのかな」と、当時の窯の形が少しずつ想像できてきます。

窯跡の前側には、今もはっきりと分かる小さな穴がひとつ。これは 窯の焚き口(たきぐち)跡と思われます。
肥前陶器窯跡は、豪華な遺構ではありません。けれど、“地面そのものが語る歴史”を感じられる貴重な場所でした。