――暮らし、権力、祈りのかたち――

福岡方面から車を走らせ、秋の光を追うように吉野ヶ里へ向かいました。
古墳を巡っているうちに、どうしてもこの場所を歩いてみたくなったのです。
思いのほか近い距離なのに、訪れる機会がなかったです。そんなもんなんでしょうね。

北口は工事中で閉鎖されていて、メインの東口から入ります。
目の前に広がる広大な丘陵を見た瞬間、思わず深呼吸。
「これは……一日じゃ足りないな」と歩きはじめました。

南のムラには、竪穴住居が点在しています。
茅葺きの屋根の下には、炉の跡と梁の影。
土の匂いがやわらかく漂い、家族の暮らしの気配がいまも残るようでした。

その奥には、機織りの家や高床の倉。
畑の一角には小さな案山子が立ち、季節の風を受けています。
人形たちが穏やかに働き、笑い、暮らす。まるで時間がゆっくり戻っていくようです。

弥生の暮らしは、思っていたよりもずっと静かで、手の届く日常の中にありました。
ここから先、祈りや権威の世界へと続く物語の入り口に立った気がします。次回は南内郭をご紹介します。