石の声がきこえる場所へ

細い農道を抜けていくと、突如として現れる大きな建物。まわり一帯は緑がうねり、土の古い呼吸が残っているようです。ここが熊本県山鹿市にある 熊本県立装飾古墳館。九州の古墳文化をまるごと体感できる、全国でも珍しい“装飾古墳の専門館”です。

駐車場に車を停め、ゆるやかな階段を上って入口へ。建物そのものが巨大な横穴式石室のようにも見えて、すでに気持ちが古代へスッと引きこまれていきます。

館のまわりには、実際の古墳跡が点在しています。遠くまで続く起伏は、“公園”というよりも “古代の大地そのもの”。あの丘の下にも、まだ眠っている歴史があるのだろうな……と、そんな想像をしたくなる風景です。

チケットを購入して館内へ。照明と静けさに包まれた展示室には、土器・石製品・須恵器など、古墳文化のさまざまな資料が整然と並んでいます。中央には山鹿周辺の地形模型があり、古墳の位置関係が一目で分かるつくり。

飾古墳とは、石室の壁や石棺に赤や黒の顔料で文様が描かれた古墳のこと。光がわずかに反射して、模様が浮きあがる瞬間があります。古代の祈りや願いが、そのまま石に残されている――そう感じるほど迫力がありました。

石室の再現展示はとくに見ごたえがあります。壁面の石積みは、ひとつひとつが違う表情をしていて、触れられないのが惜しいほどの質感。入口の石柱には赤い連続三角文や円文が残され、細かな線が今も消えずにいることに驚かされます。

館の外には、発掘された古墳の跡がそのまま保存されています。柱が立ち並んでいた跡、家形埴輪の位置、石棺の置かれていた場所――。ガラス越しの展示とは違い、太陽の下で見る「リアルな遺跡」はまた別の魅力があります。

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投稿者

arahira

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