堕天した天女は絶望の末クジラの餌に

糸島市の芥屋地区に伝わる民話です。むかしむかし、芥屋の大門の近くにある孤立した鏡岩という巨岩に、数人の天女が舞い降りてきて、澄んだ美しい声で合唱をはじめました。

玄界灘の波は沸き立ち、魚たちも飛び跳ねて天女たちを歓迎しました。天女たちは時が経つのも忘れて歌い舞い踊り、宴は夕日が沈んでも続きました。ところが、一人の天女が興奮して、禁じられていた下界の歌を歌い始めてしまいます。驚いたの他の天女たちは、逃げるように天界へ戻って行きました。

下界の歌を歌い終わった天女は、自分も天界へ戻ろうとしますが、神通力を失ってしまい、岩の上に取り残されてしまいました。それ以来、天女は毎日天界に向かって許しを請いましたが許されず。やがて心身ともに疲弊して、荒れ狂う海に身を投げてしまいました。

岩の下に開いた大穴には、近海の主である鯨が住み着いており、天女の亡骸はその餌食になってしまいました。

それ以来、鏡岩の周辺でときどき不思議な音色が聞こえてくる事があり、その後は決まって大嵐になりました。その為、芥屋の漁師たちは音色が聞こえた時は、漁に出てはいけないと言い伝えられてきたそうです。