山に眠る古代の石たち

行橋の山あいにある「御所ヶ谷神籠石(ごしょがたにこうごいし)」に行ってきました。
“こうごいし”って、ちょっと言いにくい名前ですよね。
でも現地に着くと、なんだかその響きがぴったりな、静かな場所でした。

登山道の脇には、落ち葉に埋もれた巨石が顔をのぞかせています。
説明板を読むと、7世紀ごろの山城と考えられているとのこと。
ただ、実際に歩くと、戦の匂いよりも、もっと古い「祈り」や「境界」の気配を感じます。
人が暮らし、山を神として畏れた時代の名残かもしれません。


少し登ると、「景行神社」の鳥居が見えてきました。
木漏れ日の中に立つ社殿は静かで、
祭神は日本武尊(やまとたけるのみこと)。
このあたりは伝承の多い地で、古代の軍勢が通ったとも言われています。
けれどいまは、ただ鳥の声と風の音だけ。
そんな静けさが、かえって時代を越えた存在感を漂わせていました。

さらに進むと、石垣が姿を現しました。
大小の自然石をほとんど加工せず積み上げたもの。
山肌に沿って長く続く様子は、まるで大蛇がとぐろを巻くよう。

登山道は意外と整備されていて歩きやすいですが、
岩場も多く、足元に気をつけながら進む必要があります。
それでも、森の緑と石の灰色の対比が美しく、
“史跡を歩く”というより“山に会いに行く”感覚。
帰り際、ふと振り返ると、
石列の上に光が差していて、まるで「よう来たな」と言われたようでした。