集合、集合。はじまるよー。

芝生の広場に、ティラノサウルスたちが集まってきた。
赤や緑、紫にオレンジ。種類も色もばらばらで、もはやどれが正解の恐竜なのか分からない。
係の人に言われて一応は並んでいるが、きれいに整列しているとは言いがたい。
恐竜なので、そのあたりは大目に見たい。遠くから見ると、完全に恐竜の群れ。
近づくと、中に人が入っていることが分かって少し安心する。

準備運動。
レース前には、ちゃんと準備運動の時間が設けられていた。
屈伸する恐竜、座り込む恐竜、なぜか寝転ぶ恐竜。
見た目は完全にふざけているが、中の人は転倒防止に真剣だ。
ティラノサウルスレースでは、転ぶのも起き上がるのも、全部ひと仕事。
この準備運動が、生き残りの分かれ目になる…かもしれない。

スタートが待てない。だって恐竜だもの。
スタート前から、もう落ち着きがない。
体を揺らし、しっぽを振り、じわじわ前に出ようとする恐竜たち。
止められても止まらない。恐竜なので、仕方ない気もする。
まだ合図は出ていないが、気持ちはすでに全力疾走だった。

ルールは簡単。50メートル走。タイムを競うのみ。
競技はとてもシンプル。恐竜の着ぐるみを着て、50メートルを走る。
速かった恐竜が勝ちだ。ただし、手は使えない。視界は狭い。思った方向に進まない。
走っているうちに、前の恐竜のしっぽを踏んでしまうこともある。
すると、しっぽは意外とあっさり取れる。
一度取れたしっぽは、再生しない。
それでも恐竜たちは、何事もなかったかのように走り続ける。

ターンがむずかしい。
コース途中の折り返し地点。ここで、多くの恐竜が戸惑う。
曲がろうとすると、体がついてこない。しっぽが大きく振られ、
ときには他の恐竜に踏まれてしまう。
しっぽを失った恐竜も、戦線離脱はしない。
むしろ身軽になったように、再び走り出す。恐竜は、意外とタフだ。

表彰台。
レースを終え、勝った恐竜たちが表彰台へ。
1位、2位、3位。順位は決まったが、威厳はあまりない。
観客席の前では、小さな恐竜がじっと見上げていた。
来年は自分も走るつもりなのかもしれない。
速くても遅くても、最後は拍手。
恐竜たちは、無事に一日を終えた。