この世の地獄といわれた完全自治の世界
宿泊しているホテルの近くに伝馬町牢屋敷跡があったので立ち寄ってみました。
ここはかつて江戸幕府の刑場で、あの有名な安政の大獄では橋本左内や梅田雲浜、頼三樹三郎など、数々の志士がこの場所で処刑されています。
現在は十思(じっし)公園として整備されているので陰惨な雰囲気はありません。
しかし、道を挟んで向かいはお寺で、しっかりと赤字で石碑が残っていました。こちらのお寺の境内には処刑場があったとされ、刑死者の慰霊のため延命地蔵尊が祀られています。
東京都指定文化財の石町時の鐘です。江戸時代はこの鐘をついて時刻を報せていました。
杵屋勝三郎歴代記念碑です。杵屋勝三郎というのは、長唄の三味線方の名跡です。
総勢九十六士が伝馬町に散る
ここ伝馬町牢屋敷で処刑された人物で最も有名なのが、大河ドラマの主人公にもなった長州のキチガイ先生こと吉田松陰。顕彰碑と辞世の句碑が建てられています。
「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」
ふんどしにしたためて、弟子達に残した遺書に載っていた有名な辞世の句です。吉田松陰に関しては書きたいことが多いので、また別の機会に。
さらに公園内には立派な忠魂碑も建てられています。
当時の牢屋敷の石垣の跡が、一部ですが十思スクエア前に残っています。牢屋敷は現在の刑務所のようなものではなく、死刑囚の処断を行う拘置所に近い施設でした。
牢内は囚人による完全自治制が敷かれており、劣悪な環境で皮膚病が横行し、「作造り」と称するリンチ殺人が頻繁に起きたそうです。平囚人には牢内で体を伸ばす自由さえなかったようで、まさに生き地獄ですね。
十思スクエア内には当時の様子を知ることができるジオラマなども展示されています。