まだ登るのか、信長公

前回はこちらから。本丸跡から、さらに上へ。え、まだ上るんですか。
さきほど「きつい」と言ったばかりですが、どうやら信長公は容赦がありません。
石垣のあいだを進み、木立の中を抜けていきます。

足元には、令和7年度の調査跡。ブルーシート。白い土のう。
「礎石」と書かれた札。歴史は終わっていない。いまも発掘中。
なんだか、ちょっとワクワクします。

立ち入り禁止区域にも調査が進んでいます。
「入らないでください」と言われると、なぜか余計に気になります。もちろん入りません。
大人ですから。
ここで、七重の天主が焼け落ち、その痕跡がいま掘り出されている。
四百年以上前の火事のあとを、令和の人たちがそっと確かめている。時間って、すごいですね。

そして、天主台跡。
礎石の数が、すごい。ごろごろ、と言っては失礼ですが、とにかく多い。
これ一本一本の上に柱が立ち、あの有名な安土城天主がそびえていた。
金箔。きらびやかな装飾。琵琶湖を望む絶景。いまは、石だけ。
でも、不思議と寂しくない。なにもないからこそ、頭の中で勝手に再建できます。

下りながら、二の丸跡。ここもまた、広い。
あの石垣の向こうに建物が並び、家臣たちが行き交っていたのでしょう。
いまは静かな森。戦国のざわめきは、木の葉の音に変わっています。

帰り際、祠。
賽銭箱の文字が、やけに力強い。
今日一日、「天下」「覇気」「戦国」と言ってきましたが、結局のところ、汗だくになって山を登った
中年男性が一人。それだけです。
でも、いいのです。安土城は、派手さよりも、想像力の城でした。
石だけなのに、こんなに面白い。
天下は取れませんでしたが、満足です。
次は、平地の城にしようと思います。
できれば、エレベーター付きで。